分散染料とは?分散染料の特徴や使用する繊維について解説

分散染料 繊維製品の基礎知識
この記事はこのような人にオススメ!

・分散染料とは?
・分散染料で染められる繊維は?
・分散染料にはどんな染色方法があるの?
・分散染料で染色した際の注意点は?

どもどもTにぃです

みなさん「分散染料」という染料をご存知でしょうか

「そもそも染料って何?」という人は下の記事で解説していますので、まずはそちらをご覧ください

   
分散染料とはその名の通りで水に分散させて使用する染料のことです

分散染料は私達が普段使用している身近な製品に広く使用されている染料であり、最も身近な染料の一つともいえる存在です

今回はそんな分散染料について解説していこうと思います

この記事を読むことで、分散染料とは、その特徴や分散染料で染められる繊維についてお分かりいただけ、分散染料についての理解が深まると思います

ぜひ最後までご覧ください

   

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分散染料とは?

分散染料

・水に分散させて染着させる染料
・繊維中の隙間に物理的に留まらせて染着
・染料の中で最も生産量が多い

分散染料とは非水溶性染料の一種で水に分散させて染着させる染料のことです

通常水よりも重いものは沈殿してしまいますが、分散染料には水に個体を微粒子状に安定して散在させる作用のある「分散剤」が混ぜられているため、沈殿することなく染料が分散されている状態をつくりだすことができます

分散染料は非イオン性染料であるため繊維とはイオン結合等の化学結合をすることがありません
よって繊維中の「非結晶領域」と呼ばれる隙間に染料を押し込んで物理的に留まらせることによって染着させます

繊維の中でも最も生産量が多いポリエステルの染色には分散染料が用いられます
よって染料の中で最も生産量が多いのものがこの分散染料となっています

ポリエステルに関しては下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください

   

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分散染料で染められる繊維は?

分散染料で染められる繊維

・ポリエステル
・アセテート
・ナイロン
・ビニロン
・アクリル  等

元はアセテートの染色用に開発されたのが分散染料でした

その後ポリエステル繊維が登場しその生産量の増加に伴って分散染料の生産量も増加し、現在では「分散染料=ポリエステルの染料」という認識を持つ人が多くなったと思われます

また分散染料はポリエステル、アセテート以外にもナイロン、アクリル、ビニロン等の合成繊維にも染着する染料とされています

アセテートナイロンアクリルビニロンに関してはそれぞれ解説した記事がありますので、ぜひそちらも合わせてご覧ください

   

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分散染料にはどんな染色方法があるの?

分散染料を使用した染色方法

・高温(高圧)染色
・キャリアー染色
・サーモゾル染色  等

分散染料を使用したポリエステルの染色方法には主に「高温(高圧)染色」「常圧染色」「サーモゾル染色」があります

   

高温(高圧)染色

高温(高圧)染色とは100℃以上の温度で行う染色のことです
100℃以上の高温にするために圧力釜のように高圧をかけることから高温高圧染色とも呼ばれます
高温にすることで繊維の非結晶領域という隙間を広げることができ、そのことによって繊維を押し込みやすくすることができます
結果として均一に染まりやすく発色性も上がり、濃色でも染めることが可能となります
高温に耐えうるポリエステル100%の素材を染める際に多く用いられている手法です

   

キャリアー染色

キャリアー染色とはキャリアーと呼ばれる助剤を用いて常圧下にて100℃程で染色する方法のことです
キャリアーを用いることで常圧下でも非結晶領域の隙間を広げることを助け、分散染料が染着しやすくなります
ウール混やポリウレタン交織交編素材等、相手繊維の物性低下のため100℃以上の高温にできない場合に用いられています

   

サーモゾル染色

サーモゾル染色は染液を生地にパディングし中間乾燥後に180〜200℃の高温で熱処理(キュア)する連続染色方法のことです
綿混素材の染色としては生産性が高く量産に適していることから広く採用されています
一方でポリエステル100%素材の染色ではパディングのときのピックアップのばらつきや高温処理による風合い硬化が起きる等の点であまり用いられません

   

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分散染料で染色した際の注意点は?

分散染料の注意点

・サーモマーグレーション
・昇華汚染
・オイルブリード   等

ポリエステルを分散染料で染色した際に注意すべきこととして「サーモマイグレーション」「昇華汚染」「オイルブリード」等が挙げられます

   

サーモマイグレーション

サーモマイグレーションとは染料が熱処理によって繊維表面へ拡散する現象のことです
染色時に高温をかけることで非結晶領域の隙間を広げて染着させます
これと同様に熱処理によって非結晶領域の隙間が広がるため、染着した染料が抜け出してしまう場合があります
このことで染料が繊維表面へと出てきてしまい、堅牢度低下の原因となってしまう場合があります

   

昇華汚染

昇華汚染とは染着した染料が昇華現象によって他の部分へと移って汚染してしまうことです
分散染料は繊維と化学結合しているわけではなく、物理的に留まっているだけであるため、この高温等の特定の環境下で昇華汚染が生じてしまう可能性があります
この昇華汚染の対策としてポリエステルの染色を分散染料ではなくカチオン染料での染色や原着糸を使用する方法があります
またこの昇華現象を利用して染色せずにポリエステル生地に色や柄を付与する昇華転写(捺染、プリント)という手法もあります
昇華転写に関しては下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください

   

オイルブリード

オイルブリードとは油剤によって染料が溶け出すことで他の部分へと移行し汚染してしまう現象のことです
分散染料は油剤によって溶け出す性質があるためオイルブリードによる汚染が発生してしまう可能性があります
油分の多い材料を使用する場合や、縫製等の製造工程内で油剤を使用する場合には注意が必要となります

   

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まとめ

まとめ

・分散染料は水に分散させて染着させる染料
・物理的に繊維内に染料を留まらせて染着
・ポリエステル、アセテートの染色に使用
・高温染色、キャリアー染色、サーモゾル染色等の方法
・熱や油分に注意が必要

今回は分散染料について解説してきました

分散染料とは非水溶性染料の一種で水に分散させて染着させる染料のことです

分散染料は非イオン性染料であるため繊維とはイオン結合等の化学結合をすることがありません
よって繊維中の「非結晶領域」と呼ばれる隙間に染料を押し込んで物理的に留まらせることによって染着させます

分散染料は主にポリエステル、アセテートの染色にもちいられます
その他にもナイロン、アクリル、ビニロン等の合成繊維にも染着可能となっています

分散染料を使用したポリエステルの染色方法としては「高温(高圧)染色」「キャリアー染色」「サーモゾル染色」等があり、素材に応じて使い分けられています

分散染料で染色した際の注意点としては「サーモマーグレーション」「昇華汚染」「オイルブリード」等が挙げれられ、熱と油分に注意が必要となる傾向があります

最後に注意点を解説したので「なんだか危ない染料なのかな」と感じさせてしまったかもしれませんが、分散染料は決して危ない染料ではありませんのでご安心ください

分散染料は染料の仲で最も多く生産されているということは、それだけ私達が普段使用している製品に使用されているものですので、通常通りに使用するのであればむしろ堅牢度にも優れた染料の部類に入ります

一方で「何でもOK」というわけではなく、特定の条件下では注意しなければいけないことは事実であるため、その点はぜひ覚えておいていただければと思います

ではまた!

  

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