シロセット加工とは?原理、特徴、注意点について解説

繊維製品の基礎知識
この記事はこのような人にオススメ!

・シロセット加工とは?
・シロセット加工はどのような原理なの?
・シロセット加工にはどんな特徴があるの?
・シロセット加工の注意点は?

どもどもTにぃです

みなさん「シロセット加工」という加工方法をご存知でしょうか?
シロセット加工は羊毛製品に耐久性のある折り目をつける加工方法のことで、ズボンのセンターラインなどによく用いられます

羊毛繊維関しては下の記事で開設していますので、ぜひ合わせてご覧ください

  
単に折り目をつけるだけならアイロンでも可能ですが、このシロセット加工は耐久性があることがポイントです
そして実はこのシロセット加工、みなさんご存知のアレの原理を応用して開発された加工方法なのです

今回はそんなシロセット加工について解説していこうと思います
この記事を読むことで、シロセット加工とは、その原理、特徴、注意点についてお分かりいただけ、シロセット加工についての理解が深まると思います

ぜひ最後までご覧ください

   

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シロセット加工とは?

シロセット加工

・羊毛製品にクセをつける加工
・化学的処理によって施す
・センターラインやプリーツに用いられる

シロセット加工とは羊毛製品に耐久性のある折り目などのクセを付与する形状記憶加工方法のことです
羊毛繊維へのパーマ加工と捉えるとイメージしやすいかと思います

CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)が開発した羊毛への形状記憶(セット)加工の方法であることが「シロセット(CSIRO-set)」の由来となっています

折り目をつける加工方法としてアイロンやプレス機を用いて熱、圧力、水分で折り目をつける手法が一般的に知られていると思います
特にポリエステル等の熱可塑性繊維を使用した製品に折り目をつける方法として普及しています
熱可塑性繊維に関しては下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください

   
羊毛製品もスチームアイロンで折り目をつけることは可能です
しかし羊毛は熱可塑性繊維では無いため、その方法でつけられた折り目は一時的なものであり、水に濡れることで消失してしまう可能性が高いです
これは繊維内の水素結合の切断と再結合でつけた折り目であるため、水に濡れることで再度水素結合が切断されてしまい結果として折り目が無くなってしまいます
一方、シロセット加工では化学的処理によって水の影響を受けづらい結合部分に作用することで持続性の高い折り目をつけることが可能となります
そのため羊毛製品へ折り目をつける加工にはシロセット加工が用いられる場合が多いのです

シロセット加工はズボンのセンターラインだけでなくジャケットへの折り目加工、スカートへのプリーツ加工など羊毛製品への加工方法として幅広く用いられています

   

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シロセット加工はどのような原理なの?

出典:東京都クリーニング生活衛生同業組合HP
シロセット加工の原理

①結合切断
②成形
③再結合

シロセット加工は薬剤を使用して繊維内部のシスチン結合を切断し、折り目を付けた状態で再度結合させること持続性の高いクセを付与します

【①結合切断】
加工剤によってたんぱく質が持つシスチン結合を切断します
シスチン結合が切断されることで繊維が変形しやすくなります
この際加工剤は噴霧装置で付与される場合が多いです

【②成形】
任意の折り目をつけて成形します
この際元あった折り目と異なる折り目をつけると二重に折り目がついてしまうため注意が必要です

【③再結合】
プレスしながらスチーミング、ベーキングすることでシスチン結合を再結合させます
成形した状態で再度シスチン結合させること繊維そのものの形状を変えているので、水の影響を受けづらい耐久性のある折り目が付与されます

   

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シロセット加工にはどんな特徴があるの?

シロセット加工の特徴

・耐久性が高い
・色、柄、風合いへの影響が少ない
・人体、環境への負荷が少ない   等

シロセット加工最大の特徴はやはり羊毛製品に耐久性の高い折り目がつけられるというところです
熱可塑性繊維でない羊毛への耐久性の高い折り目をつける加工は数少なく、シロセット加工がその代表例といえます
全国シロセット加工業協同組合が認可した組合員が施すシロセット加工製品には専用の下げ札やラベルがつけられます
これらがついた製品の折り目やプリーツには70℃の温水に30分浸漬しても消失しないことが義務づけられています
つまり認定機関その耐久性を保証した加工方法、それがシロセット加工であるということです

またシロセット加工は生地の色、柄、風合いなどへの影響が少ないことも特徴として挙げられます
シロセット加工を施すことでボロボロになってしまったり変色してしまうようであれば実用性は低いですよね
また樹脂を塗布して固めてしまうと風合いが固くなり着用感に影響してしまいます
シロセット加工ではそのようなことが起こりにくく、生地への影響が少ないことが特徴です

加えてシロセット加工は人体や環境への負荷も少ないことも特徴です
元々シロセット加工は髪の毛に施すパーマの原理を応用して開発された経緯があります
実際に人体に施してきたことが元となっているため、当然シロセット加工は人体や環境への負荷も少ないとされています

   

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シロセット加工の注意点は?

シロセット加工の注意点

・羊毛製品に可能
・永久的に持続する訳ではない
・個人での加工は困難     等

シロセット加工にもいくつかの注意点が存在します

まずは羊毛製品に可能という点です
シロセット加工はたんぱく質が持つシスチン結合に作用することでクセをつける加工です
つまり同じ非熱可塑性繊維でありながらセルロースを主成分とする綿や麻などにはシロセット加工は効果が無いということになります
シロセット加工はあくまでたんぱく質を主成分とする羊毛製品であるということを理解する必要があります

またシロセット加工でつけられたクセは永久的に持続する訳ではないという点にも注意が必要です
確かにプレス加工でつけられたクセと比較すると耐久性は高いですが、永久的には持続しません
着用回数や状況にもよりますが、概ね1シーズン程度でクセが弱くなっていく傾向がありますので、クセが落ちてきたと感じたら再度加工を施してもらう必要があります

そしてシロセット加工は個人で施すことは困難です
髪の毛のパーマは美容室でしてもらいますよね
それと同じでシロセット加工も全国シロセット加工業協同組合の組合員によって施してもらう必要があります
クリーニング店でシロセット加工は依頼できますので、ぜひ加工はプロに任せましょう

   

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まとめ

まとめ

・羊毛製品にクセをつける加工
・化学的処理によって施す
・原理は①結合切断②成形③再結合
・耐久性、安全性が高い
・羊毛限定、永久で無い、個人不可

今回はシロセット加工について解説してきました

シロセット加工とは羊毛製品に耐久性のある折り目などのクセを付与する形状記憶加工方法のことです

シロセット加工では化学的処理によって水の影響を受けづらい結合部分に作用することで持続性の高い折り目をつけることが可能となります

シロセット加工は薬剤を使用して繊維内部のシスチン結合を切断し、折り目を付けた状態で再度結合させること持続性の高いクセを付与します

シロセット加工の特徴としては、耐久性が高いクセをつけられる、生地の色、柄、風合いなどへの影響が少ない、人体や環境への負荷も少ないことなどが挙げられます

シロセット加工の注意点としては、たんぱく質のシスチン結合に作用する方法であるためたんぱく質繊維に限定される、つけられたクセは永久的なものでは無い、個人で加工を施すのは不可能などが挙げられます

髪の毛へのパーマが繊維製品の加工に応用されていたことに驚いた人はいらっしゃるのではないでしょうか

シロセット加工を知らない人が名前だけ聞いても遠い存在のものにしか感じられないかもしれませんが、パーマを応用した加工方法と聞くとグッと近い存在のものに感じられるのと思います

繊維業界に関わることはそのようなことが多く、少し情報を知るだけで実はとても身近なものだと理解できるものが多々あります

知らない単語を聞くと拒否してしまいがちですが、何事も興味を持ってぜひ今後も学んでいっていただけると嬉しいです

ではまた!

   

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