天然皮革とは?天然皮革の特性や種類、仕上げ方法について解説

天然皮革 繊維製品の基礎知識
この記事はこのような人にオススメ!

・天然皮革とは?
・天然皮革にはどんな特性があるの?
・天然皮革にはどんな種類があるの?
・天然皮革にはどんな仕上げ加工があるの?

どもどもTにぃです

「天然皮革」をご存じでしょうか?

「そもそも皮革ってなに?」という人は下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください

   
天然皮革とは動物から剥いだ皮をから毛を落として使用する素材のことです

天然皮革に用いられる動物の皮には様々な種類があります
また仕上げ手法の違いによっても様々な種類に分けることができます
つまり天然皮革は「皮自体の種類×仕上げの種類」によって非常に多くの選択肢があるといえます

今回はそんな天然皮革について解説していこうと思います
この記事を読むことで、天然皮革とは、その特性や種類についてお分かりいただけ、天然皮革についての理解が深まると思います

ぜひ最後までご覧ください

   

スポンサーリンク

天然皮革とは?

天然皮革

・動物から剥いだ皮の毛を落とした素材
・「皮」「革」は異なる
・人類最古の衣料

天然皮革とは動物から剥いだ皮から毛を落として使用する素材のことです

反対に天然皮革を模してつくられる人工的な素材のことを合成皮革や人工皮革といいます
合成皮革、人工皮革については下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください

   
そもそも「皮」と「革」は異なるものとして分別されます
「皮」は動物から剥いだ生皮とそれを乾燥したり塩漬けしたりして保存、保管、輸送に耐えられるようにした原皮を指します
一方「革」は動物から剥いだ皮を脱毛し生皮や原皮の腐敗を防ぎ、柔軟性や耐久性を付与するための「鞣(なめし)」を行って得られる製品を指します

人類が最初に保温と体の保護のために身に着けたのは動物の皮であったとされる説があります
皮はそのままでは腐りやすく、また硬いものですが、7000年前には鞣技術により「皮」を「革」に変えて、耐熱性、微生物に対する抵抗性を改善し、柔軟性を付与して使用していたとされています

   

スポンサーリンク

天然皮革にはどんな特性があるの?

天然皮革の特性

・吸湿性、透湿性に富む
・ほつれない
・バラつきが生じやすい
・水、熱に弱い
・カビや虫食いの影響を受ける  など

天然皮革はあらゆる動物から採取される皮が含まれますが、ある程度共通した特性があります

天然皮革は一般的に吸湿性、透湿性に富むとされています
これは動物の皮を構成しているたんぱく質が親水性であるためといえます

また天然皮革は切り口がほつれないという特性もあります
これは皮を構成しているたんぱく質繊維(コラーゲン)の層状構造で繊維束が強く交絡しているためです
切り口がほつれないことで製品に仕上げやすいというメリットが生まれます

一方で同じ種類の動物でも個体差の違い、皮の部位による強さや染料の浸透度合いの違いがあり、バラつきが生じやすいという特性があります

また水や熱に弱いとされており、親水性であるが故に水の影響を受けやすく給水によって形態が変化しやすい、湿熱による劣化が著しい、熱水によって収縮するため高温で染色ができず染色堅牢度が低いという特性もあります

加えて環境によってはカビや虫食いの影響を受けることもあるため取り扱いや保管方法には十分注意が必要とされます

   

スポンサーリンク

天然皮革にはどんな種類があるの?

天然皮革の種類

・牛革
・豚革
・羊革
・山羊革
・馬革
・鹿革
・カンガルー革  など

天然皮革には様々な種類の動物の皮が利用されています
代表的な動物の種類と特徴をピックアップして解説します

   

牛革

ブル、ステア、カウ、キップ、カーフの種類に分けられます
ブル、ステア、カウは成牛皮であるため耐久性があり、靴、鞄、家具などに使用されます
キップ、カーフは成牛皮よりも薄くて柔らかいため、ハンドバッグ、手袋、衣料などに使用されます

【ブル】
3歳以上の牡の皮
厚くて丈夫

【ステア】
2歳以上の去勢牛の皮
生産量が少ない

【カウ】
2歳前後の経産牛の皮

【キップ】
0.5〜2歳くらいまでの皮

【カーフ】
生後半年以内の子牛の皮

   

豚革

硬めで凹凸が目立ち毛穴が見えやすいとされています
牛皮よりも強度が低く、安価である傾向があります
靴の裏革、鞄、衣料などに使用されます

   

羊皮

シープ、ラム、ヤンピーの種類に分けられます
衣料、手袋、靴などの使用されます

【シープ】
柔らかくて伸縮性があるが強度が低い

【ラム】
子羊の皮で大変柔らかいとされます

【ヤンピー】
インド産の羊の皮
羊皮の最高級品とされています

   

山羊革

ゴートとキッドに分けられます
手袋や靴などに使用されます

【ゴート】
羊皮よりも薄くて強度がある
柔らかく表面に凹凸があるのが特徴

【キッド】
子山羊の皮
薄くて柔らかいが強度が低い

   

馬革

コードバンは馬の尻の部分の皮で、緻密な組織で光沢があり丈夫な点が特徴
鞄、ベルト、財布などに使用されます

   

鹿革

セーム革は油鞣したもの
柔らかく吸湿性に富み、革では最も軽く最高級品とされます
また革では珍しく水洗いが可能とされています
手袋、衣料、レンズ拭きなどに使用されます

   

カンガルー革

軽くてしなやかであり上級品とされています
スポーツシューズなどに使用されます

   

スポンサーリンク

天然皮革にはどんな仕上げ加工があるの?

革の仕上げによる種類

・スムース
・スエード
・ベロア
・ヌバック
・バックスキン
・床革
・シュリンクレザー
・パテントレザー
・エンボス革
・エルク  など

革にはその仕上げ手法による種類も存在します
それぞれ解説していきます

   

スムース

革表面の毛穴などの模様をいかしたもので、銀付き革、銀面革と呼ばれる
靴の甲革、鞄、ハンドバッグなどに用いられる

出典:ゼットクラフト楽天市場店HP

   

スエード

革の肉面を細かいサンドペーパーで起毛させたソフトな革
裏革ともいう
靴、ハンドバッグ、衣料などに用いられる

   

ベロア

スエードより起毛の毛羽を長く仕上げた革のこと

   

ヌバック

銀面を擦ってごく短い毛羽を立たせたビロード状の革のこと
高級品にはカーフが用いられる
袋物、靴の甲革、衣料などに用いられる
水滴が付着するとシミになりやすいので注意が必要とされる

   

バックスキン

鹿の革の銀面をサンドペーパーで擦って起毛させたもの
靴、ハンドバッグ、衣料などに用いられる

   

床革

厚い革を2〜3枚に分離したときにできる銀面層下の網状層の革のこと
安価とされている

出典:NPO法人 日本皮革技術協会HP

   

シュリンクレザー

鞣工程で薬品処理を行い表面を縮ませて銀面に変化をもたせた革のこと

   

パテントレザー

クロム鞣後の表面にウレタン樹脂を厚くコーティングして光沢を出したもの
エナメル革といわれ、紳士礼装靴、婦人靴、ハンドバッグなどに用いられる

   

エンボス革

革の表面に型押しをして様々な模様をつけた革のこと
型押し革ともいう
ハンドバッグ、各種ケースなどに用いられる

   

エルク

クロム鞣をした成牛革を多方向からもんで柔らかくしシボをつけたもの

   

スポンサーリンク

まとめ

まとめ

・天然皮革とは動物から剥いだ皮の毛を落とした素材
・吸湿性、透湿性、ほつれない、バラつきやすい、水や熱に弱い
・牛革、豚革、羊革、山羊革などの種類
・スムース、スエード、ベロア、ヌバックなど

今回は天然皮革について解説してきました

天然皮革とは動物から剥いだ皮から毛を落として使用する素材のことです

天然皮革の一般的に「吸湿性、透湿性に富む」「ほつれない」「バラつきが生じやすい」「水、熱に弱い」「カビや虫食いの影響を受ける」などの性質があります

天然皮革の種類としては「牛革」「豚革」「羊革」「山羊革」「馬革」「鹿革」「カンガルー革」などが挙げられます

また革の仕上げによる種類としては「スムース」「スエード」「ベロア」「ヌバック」「バックスキン」「床革」「シュリンクレザー」「パテントレザー」「エンボス革」「エルク」などが挙げられます

天然皮革と一言でいっても、使用される動物の種類や仕上げによる種類など非常に多くの種類が存在することをお分かりいただけたのではないでしょうか

天然皮革は動物愛護の観点から様々な意見がありますが、本物志向の根強いファンが多く存在することも事実です

合成皮革や人工皮革でいくら本物に近づけたとしても、あくまでも模してつくったものであることには変わりなく、やはり本物の天然皮革特有の質感や性能を完全に再現することは困難でしょう

合成皮革や人工皮革は「善」、天然皮革は「悪」と決めつけるのではなく、ニーズや用途に応じてそれぞれを上手に使い分ける、どのようにすれば持続可能な形でこの産業を続けていけるかを総合的に考えて今後も共存していけると良いなと感じています

ではまた!

   

コメント