どもどもTにぃです
みなさん「溶融紡糸」という言葉をご存知でしょうか?
溶融紡糸とは紡糸方法の一つで、原料を溶かした液を紡糸ノズルから押し出し、冷やし固めて繊維をつくる方法です
紡糸に関しては下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください
フィラメントをつくる紡糸方法としては大きく分けると「湿式紡糸」「乾式紡糸」そして今回の「溶融紡糸」があります
溶融紡糸はその手法が故に、他の紡糸方法には無い特徴があり、そして環境に優しい紡糸方法といわれています
今回はそんな溶融紡糸について解説していこうと思います
この記事を読むことで溶融紡糸とは、その特徴、工程、方式についてお分かりいただけ、溶融紡糸についての理解が深まると思います
ぜひ最後までご覧ください
溶融紡糸とは?
溶融紡糸とは原料を溶融させて紡糸ノズルから押し出し、冷却によって繊維化する紡糸方法のことです
原料ポリマーを加熱溶融させ液状にしたものを、冷たい雰囲気中へ紡出して引き伸ばし、固化させることで繊維化していきます
溶融紡糸はその名の通り「溶融」させる紡糸方法のため、熱をかけることで溶ける性質を持つ繊維がこの紡糸方法でつくられます
その代表例がポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの熱可塑性合成繊維です
そこに加えてガラス繊維や金属繊維も溶融紡糸によって繊維がつくられる場合があります
熱可塑性繊維に関しては下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください
溶融紡糸と一言で言っても、実は4つの方式に分類することができます
その4つの方式とは「紡糸-延伸法」「直延伸法(スピンドロー)」「POY-DTY法」「超高速紡糸法」です
それぞれの内容は後ほど解説します
溶融紡糸にはどんな特徴があるの?
溶融紡糸はその方法が故に、他の紡糸方法には無い特徴があります
まず特徴の一つ目として「生産性が高い」ことが挙げられます
これは溶融紡糸は他の紡糸方法に比べて工程が簡素であることが理由です
また単純に紡糸速度も速めやすいため、工程全体として素早く流していくことが可能となります
特徴の二つ目としては「環境に優しい」ことが挙げられます
例えば湿式紡糸や乾式紡糸は原料を液化するために環境負荷の高い薬剤や有機溶剤を使用する場合があります
一方溶融紡糸は原料を液化するために必要なものは「熱」ですので、この点で環境負荷が低いと言えます
また溶融紡糸の方法は他の紡糸方法に比べてエネルギー消費量が少ないとされており省エネな紡糸方法でもあると言えるでしょう
特徴の三つ目としては「異形断面繊維にも適している」ことが挙げられます
異形断面繊維とは三角断面や星形断面などの丸断面ではない繊維のことです
この異形断面繊維をつくるには、工程が簡素であり紡出後のポリマーを固化させやすい溶融紡糸が適しており、紡糸ノズルの孔の形状を変えるだけで簡単に異形断面繊維をつくることが可能となります
異形断面繊維に関しては下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください
溶融紡糸にはどんな工程があるの?
溶融紡糸の工程としては大きく「①溶融」「②紡出」「③延伸」の工程に分けることができます
まず最初に原料を熱で溶かし紡糸液をつくります
合成繊維の場合は「ペレット」と呼ばれる粒が原料となっており、この粒を溶かすことで紡糸液となります
次に紡糸液を紡糸ノズルから押し出すことで繊維形状にしていきます
イメージとしてはシャワーヘッドのように無数の小さな孔が空いている口金からところてんをつくるようなイメージです
また紡出直後に冷却することで繊維状のまま冷やし固められます
そしてその後は「延伸」という工程で引き伸ばされます
回転速度の異なる複数のローラーを通ることで繊維は引き伸ばされ、繊維として必要な強度や弾性が付与され、必要な太さへ整えられていきます
溶融紡糸の工程を大まかに説明すると以上のようになりますが、文字だけではイメージしにくいと思いますので、下の動画も合わせてご覧いただくと理解しやすいと思います
溶融紡糸にはどんな方式があるの?
溶融紡糸はその中でもさらに「紡糸-延伸法」「直延伸法(スピンドロー)」「POY-DTY法」「超高速紡糸法」の4つに分類することができます
繊維、糸の用途、生産量、加工の有無などによってそれぞれの方式が使い分けられます
それぞれ解説していきます
紡糸-延伸法
未延伸糸をつくる紡糸工程と、これを延伸する延伸工程に分けて行う方式
未延伸糸とは紡糸したての状態で、繊維の形をしているが分子鎖の配向度が低く、このままでは糸としてつかうには物性に乏しい
延伸工程では、未延伸糸を数倍に引き伸ばして分子鎖を適度に配向させ、必要に応じて熱処理を行って結晶化させ、延伸糸とする
直延伸法(スピンドロー)
紡糸工程と延伸工程を連結して1工程で行う方式
工程省略に加えて、付帯作業の自動化技術も発達しており、フィラメントの製造に広く用いられている
POY-DTY法
溶融紡糸の紡糸速度を早くすると、紡糸中の繊維に加わる張力によって、分子鎖がいくぶんか配向して未延伸糸の強度が増し、その分だけ延伸できる余地が小さくなる
この状態であると多少配向は進んでいるも完全に結晶化された状態ではないため、耐熱性を有することとなり、仮撚り加工と同時に延伸を行うことができるようになる
この場合の未延伸糸を「POY(Partially Oriented Yarn:部分配向糸)」といい、この糸を用いた加工糸を「DTY(Draw-Textured Yarn:延伸仮撚り糸)」という
DTYに関しては下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください
超高速紡糸法
紡糸をさらに高速化することで、紡糸工程での配向が進み、延伸工程を経なくても使用が可能となる
この方法を「超高速紡糸法」と呼び、ポリエステルを中心に一部の繊維で実施されている
通常の延伸糸に比べ、熱収縮率が小さい、染まりやすい、風合いが柔らかいなどの特徴があるとされる
ただし加工特性が異なるため、用途によっては適さない場合もある
まとめ
今回は溶融紡糸について解説してきました
溶融紡糸とは原料を溶融させて紡糸ノズルから押し出し、冷却によって繊維化する紡糸方法のことです
熱可塑性合成繊維、ガラス繊維、金属繊維の紡糸で用いられる手法です
溶融紡糸には「生産性が高い」「環境に優しい」「異形断面繊維にも適する」などの特徴があります
溶融紡糸工程には大まかに分けると①溶融工程、②紡出工程、③延伸工程があります
溶融紡糸はさらに「紡糸-延伸法」「直延伸法」「POY-DTY法」「超高速紡糸法」の4つに分類することができます
ポリエステル、ナイロンを紡糸する方法であるため、数ある紡糸方法の中で最も生産量の多いのが溶融紡糸だと思います
現時点でも環境に優しい紡糸方法といわれていますが、今後の技術の進歩でますます環境に優しく、より生産性の高い方法が開発されていくと思います
新たな繊維にも注目ですが、新たな繊維のつくり方にも注目していきたいと思います
ではまた!
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