どもどもTにぃです
みなさん「抜染(ばっせん)」という言葉をご存じでしょうか?
抜染とは捺染方法の一つで、抜染剤によって染料を分解し脱色することで模様を表現する方法のことです
捺染については下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください
抜染は脱色する方法であるため白色で模様を表現できることは想像しやすいと思いますが、実は白色以外でも模様を表現することが可能であり、一言で抜染といってもその中にはいくつかの種類があります
また抜染は着用感を損ねにくく衣類に向いている捺染方法であり、通常の直接捺染にはない抜染ならではの特徴があります
今回はそんな抜染について解説していこうと思います
この記事を読むことで抜染とは、その特徴、工程、種類、抜染剤の種類についてお分かりいただけ、抜染についての理解が深まると思います
ぜひ最後までご覧ください
抜染とは?
抜染とは抜染剤を印刷した部分の染料を分解し、部分に脱色することで模様を表現する捺染技法の一つです
先に地染めしておいた生地に対して柄の部分に抜染剤を含む抜染糊を印刷し、乾燥、スチーミングした後に洗い落とすことで、その部分の染料が分解し脱色され模様として表現されます
抜染には「白色抜染」「半抜染」「着色抜染」の種類があり、必要に応じて使い分けられます
また染料を分解する役割を果たす抜染剤には「還元抜染剤」と「酸化抜染剤」があり、抜染剤は繊維の種類などに応じて使い分けられます
抜染にはどんな特徴があるの?
抜染の特徴として「風合いを損ねにくい」「可抜染料使用」「高度な管理が必要」「ポリエステルには不向き」などの特徴が挙げられます
それぞれ解説してきます
【生地の風合いを損ねにくい】
抜染の一番のメリットとして生地の風合いを損ねにくいということが挙げられます
通常の直接捺染であれば生地の上にインクが乗るため、その部分がインクによって固くなってしまいせっかくの柔らかい風合いを損ねてしまいます
一方で抜染は、最終的には抜染糊は除去され生地のみが残るため、生地本来の風合いを損ねにくく柔らかなままにしておくことができます
柔らかさは着用感や使用感にに大きく影響する要因であるため、大きなメリットとなるといえるでしょう
【地染めには可抜染料を使用】
抜染は染料を分解し脱色することで模様を表現する方法です
そのため抜染剤によって分解されて脱色する性質を持つ可抜染料を用いる必要があります
染料は何でも良いというわけではないので注意が必要です
【高度な管理が必要】
抜染の際に不適切な抜染剤を用いたり、過剰に抜染剤を用いたりすると、生地の脆化や白色抜染部分が経時とともに復色するなどのトラブルが発生してしまう可能性があります
そのため抜染作業には極めて高度な管理が必要とされます
【ポリエステル生地には向かない】
繊維製品においてポリエステルは最も多く用いられる繊維の一つですが、残念ながらポリエステルは抜染に不向きとされています
ポリエステル繊維は主に分散染料で染められる場合が多いですが、この分散染料は分解されにくいため、きれいに脱色することが困難とされています
また綿とポリエステルの混紡など、ポリエステルを含む複合素材の場合でも同様に抜染には向かないため注意が必要です
抜染のやり方は?
抜染には「①浸染②印刷③乾燥④蒸熱⑤水洗」の工程があります
それぞれ解説していきます
【①浸染】
まず初めに準備工程として生地を地染めします
浸染によって生地を無地染めし、染料には可抜染料を用います
浸染については下の生地で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください
【②印刷】
次に抜染糊を生地に印刷していきます
抜染糊を印刷した部分の染料が分解され脱色されるため、模様状に抜染糊を印刷することで模様を表現することができます
印刷にはスクリーン印刷などが用いられる場合が多いです
【③乾燥】
印刷した抜染糊を乾燥させ、ある程度固化させます
他のものに付着したり、模様が崩れたりすることを防ぎます
【④蒸熱】
スチーミングすることで抜染剤が染料を分解することを促進させます
この蒸熱工程が抜染の仕上がりに大きく影響するとされています
【⑤水洗】
最後に水洗いすることで抜染糊を落とします
この工程で分解された染料も一緒に流し落とされることで模様が現れます
抜染にはどんな種類があるの?
抜染には「白色抜染」「半抜染」「着色抜染」の3種類があります
それぞれ解説していきます
白色抜染
地染めした生地の上に抜染剤を含む抜染糊を印刷することで染料を分解し脱色させて模様を表現する方法のこと
染料をほぼ全て分解させることで繊維の色(基本的に白色)を表出させ、白抜きの模様を表現します
一般的に抜染というとこの方法を指す場合が多いです
半抜染
白色抜染に対して、地染め濃さの半分程度の濃さを残すことで色の濃淡で模様を表現する方法のこと
地染め本来の色の濃さ、地染め半分程度の濃さの部分の2色だけでなく、そこに白色抜染を加えて3色以上で模様を表現することも可能
半抜染における脱色濃度の管理は非常に困難であり、再現性は乏しいとされています
着色抜染
抜染糊の中に色材を加えることで脱色した部分に着色する方法のこと
抜染糊の中に抜染剤に耐え得る染料や顔料などの色材を加えて印刷することで地染め色と白色以外の色を加えることが可能となります
着色抜染糊は経時により粘度変化や着色用色材の変化などを起こしやすいため、速やかな印刷作業が必要となります
印刷後の蒸熱工程によって発色されます
抜染剤にはどんな種類があるの?
染料を分解する役割を果たす抜染剤には「還元抜染剤」と「酸化抜染剤」があります
それぞれ解説していきます
還元抜染剤
各繊維に応じて下記のようにそれぞれの還元抜染剤が用いられます
セルロース繊維にはロンガリット、デクロリンなどの抜染剤が用いられます
アクリル繊維には塩化第一錫、加工錫、デクロリンなどの抜染剤が用いられます
羊毛、ナイロン繊維にはデクロリンなどの抜染剤が用いられます
酸化抜染剤
酸化抜染剤としては塩化酸塩や過マンガン酸塩などが挙げられます
これらの抜染剤は染料を酸化分解する働きがあります
しかしこれらの抜染剤は生地を脆化させる危険があるため、現在ではあまり使用されていません
まとめ
今回は抜染について解説してきました
抜染とは抜染剤を印刷した部分の染料を分解し、部分に脱色することで模様を表現する捺染技法の一つです
先に地染めしておいた生地に対して柄の部分に抜染剤を含む抜染糊を印刷し、乾燥、スチーミングした後に洗い落とすことで、その部分の染料が分解し脱色され模様として表現されます
抜染には「風合いを損ねにくい」「可抜染料使用」「高度な管理が必要」「ポリエステルには不向き」などの特徴があります
また抜染には「①浸染②印刷③乾燥④蒸熱⑤水洗」の工程があります
抜染の方法には「白色抜染」「半抜染」「着色抜染」の3種類があり、デザインによってそれぞれの方法が使い分けられます
抜染剤にはロンガリット、塩化第一錫、デクロリンなどの還元抜染剤と塩化酸塩、過マンガン酸塩などの酸化抜染剤があります
酸化抜染剤に関しては生地を脆化させる危険性が高いため、現在ではあまり使用されていません
抜染といっても単に色を抜くだけでなく、半分程度色を抜いたり、色を抜いた部分に着色したりなど様々な種類があることをお分かりいただけたと思います
Tシャツやジーンズなどで抜染が用いられているアイテムがありますので、ポリエステル以外で白抜きデザインのこれらのアイテムを見かけた際にはぜひ確認してみてください
ではまた!
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