乾式紡糸とは?乾式紡糸の特徴、工程、つくられる繊維について解説

乾式紡糸 繊維製品の基礎知識
この記事はこのような人にオススメ!

・乾式紡糸ってなに?
・乾式紡糸でつくられる繊維は?
・乾式紡糸はどんな工程なの?
・乾式紡糸にはどんな特徴があるの?

どもどもTにぃです

「乾式紡糸」という言葉をご存知でしょうか?

「そもそも紡糸ってなに?」という人は下の記事で解説していますので、まずはそちらをご覧ください

     
乾式紡糸とは、原料を揮発性溶剤に溶かして紡糸原液をつくり、加熱気流の中へ押し出すことで溶剤を気化させて繊維をつくる方法です
繊維を固化させるために液体を使用せずに乾式で行われる紡糸方法であるため「乾式紡糸」といわれます

私は乾式紡糸は湿式紡糸と溶融紡糸の中間に位置するような紡糸方法であると認識しています

乾式紡糸はその方法であるが故の特徴を持ち、乾式紡糸であれば安定的に比較的生産性高くつくることができる繊維があります

今回はそんな乾式紡糸について解説していこうと思います

この記事を読むことで乾式紡糸とは、その工程、特徴、乾式紡糸でつくられる繊維についてお分かりいただけ、乾式紡糸についての理解が深まると思います

ぜひ最後までご覧ください

     

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乾式紡糸とは?

乾式紡糸

・紡糸原液に含まれる溶剤を気化させ繊維化
・アセテート、ポリウレタンなど
・乾湿式紡糸もある

乾式紡糸とは溶剤に溶かした原料を紡糸ノズルから押し出し、溶剤を高温気流中で気化させて繊維化する方法のことです
原料となるポリマーを揮発性の高い溶剤に溶解して紡糸原液をつくり、紡糸ノズルから高温の気流中へと紡出し、溶剤を飛ばすことで固化しながら引き伸ばされます

乾式紡糸は半合成繊維のアセテートや合成繊維のポリウレタンなどの紡糸方法として用いられます
ちなみにこれらの繊維からなる衣類は溶剤に溶けやすいため、除光液などの溶剤分を多く含むものが付着してしまうと大きなダメージを受けてしまうので日常生活でも注意が必要です
アセテートポリウレタンについては解説した記事がありますので、そちらもぜひ合わせてご覧ください

乾式紡糸には分類されませんが、「乾湿式紡糸」という紡糸方法も存在します
これはその名の通りで乾式紡糸と湿式紡糸を組み合わせたような紡糸方法です
リヨセルやアクリルの一部はこの乾湿式紡糸でつくられ、また液晶紡糸にも利用されます
湿式紡糸、液晶紡糸については下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください

     

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乾式紡糸はどんな工程なの?

乾式紡糸
出典:業界マイスターに学ぶ 繊維の基礎知識
乾式紡糸の工程

①原液化
②紡出
③気化
④延伸

乾式紡糸は大まかに「①原液化」「②紡出」「③気化」「④延伸」の工程に分けることができます

【①原液化】
原液となるポリマーを揮発性の高い溶剤に溶解させて紡糸原液をつくる
揮発性溶剤としてはアセトンなどが利用される

【②紡出】
紡糸ノズルから紡糸原液を吐出する

【③気化】
高温の気流中を通過させ溶剤を気化しながら繊維状へと固化していく
一方から加熱気体を入れ、もう一方で気体を回収することで気流をつくる
加熱気体回収と同時に気化された溶剤も回収される

【④延伸】
固化した繊維を引き伸ばして必要な物性を付与する

     

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乾式紡糸にはどんな特徴があるの?

乾式紡糸の特徴

・溶剤よって溶解する繊維に適用
・紡糸速度は湿式以上溶融以下
・溶剤の気化速度が重要

乾式紡糸はその方法が故に他の紡糸方法には無い特徴があります

まず一つ目の特徴は溶剤によって溶解する繊維に適用することです
熱溶融し、溶融紡糸で安定的に生産できるものは溶融紡糸で生産すれば良いですが、それ以外の繊維は乾式紡糸もしくは湿式紡糸となります
しかし湿式紡糸は廃液処理の問題や紡糸速度の遅さなどデメリットも多く、乾式紡糸の方がメリットが出る場合が多いです
また「熱溶融するが溶融紡糸では安定して生産できない」などのときも乾式紡糸が適している場合があります
溶融紡糸に関しては下の記事で解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください


二つ目の特徴としては紡糸速度は湿式紡糸以上溶融紡糸以下ということが挙げられます
乾式紡糸は100~1000m/分程度、湿式紡糸は10~100m/分程度、溶融紡糸は2000m/分程度です
紡糸速度では乾式紡糸は湿式紡糸以上であり、溶融紡糸以下であるということになります
3種類の中では中間に位置するため、決して紡糸速度が遅いということはなく、比較的効率よく生産できる方法であるといえるでしょう

三つ目の特徴として溶剤の気化速度が重要ということが挙げられます
乾式紡糸では溶剤が繊維の中心部から表面に向かって発散する速度と、繊維表面からの溶剤の気化速度とのバランスによって繊維の断面形状が変化してしまいます
溶剤の気化速度が速いと紡糸ノズルが円形であっても繊維断面は扁平や繭形などになりやすいとされています

     

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まとめ

まとめ

・乾式紡糸は紡糸原液に含まれる溶剤を気化させ繊維化
・アセテート、ポリウレタンなどの紡糸に用いられる
・工程は①原液化②紡出③気化④延伸
・生産性は比較的高いが溶剤の気化速度が重要

今回は乾式紡糸について解説してきました

乾式紡糸とは溶剤に溶かした原料を紡糸ノズルから押し出し、溶剤を高温気流中で気化させて繊維化する方法のことです
原料となるポリマーを揮発性の高い溶剤に溶解して紡糸原液をつくり、紡糸ノズルから高温の気流中へと紡出し、溶剤を飛ばすことで固化しながら引き伸ばされます

乾式紡糸は半合成繊維のアセテートや合成繊維のポリウレタンなどの紡糸方法として用いられます

乾式紡糸は大まかに「①原液化」「②紡出」「③気化」「④延伸」の工程に分けることができ、気化工程が乾式紡糸特有の工程といえます

乾式紡糸の紡糸速度は溶融紡糸に比べると遅いですが、湿式紡糸に比べると早く設備も簡素であるため、比較的生産性が高いといえます

ただし溶剤の気化速度が重要であり、気化速度が速すぎると異形断面となってしまう場合があります

乾式紡糸は溶融紡糸よりも生産性は低く多くの設備を必要としますが、湿式紡糸よりも生産性は高く設備も簡素です
そういう意味で溶融紡糸と湿式紡糸の中間に位置する紡糸方法だと私は理解しています

また乾式紡糸特有の工程は気化工程であり、そしてその工程が繊維の仕上がり具合を左右する重要な工程であるということがお分かりいただけたと思います
まさに乾式紡糸の肝は気化工程であるといえるのではないでしょうか

繊維そのものの知識も大切ですが、それに付随する繊維のつくり方についての知識も非常に重要です
つくり方も含めて覚えることで、繊維に対する理解がより深まると思います
今後も一緒に勉強していきましょう

ではまた!

     

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